メキシコシティの日本人宿で出会ったサーファーのSは、ボードを持って波を追い求め、一人、中南米を旅している。彼の日本での生業は大工だという。手に職がある彼は以前、少しの間、カリフォルニアでちょっと変わった仕事をしていたという。

メキシコのプエルトアンヘル。
今、ここ!

 「違法か合法か、よく分かりませんが、住み込み、飯つきの仕事で時給25ドルもらえますねん。1カ月もいると、5000ドルくらいすぐに貯まります」と言うのである。

 その仕事というのは、大麻農園で栽培された葉っぱを精製し、ハシシ(大麻樹脂)にする仕事だという。「農園で働いていると、時給以外にもいいことがあるんです。少ししか採れないんで、製造者しか味わえないんですけど、製造の過程で細かい粉が出るのですが、それがヤレるんです。これが、めちゃくちゃいいんですわ」と言うのだ。

日本の農産物だから質が高い?

 「中南米は、北に上がるほど結構、検問がキツい。特に、コロンビアとかから北上するルートはアメリカに麻薬が運ばれる道だから、手荷物の検査とか厳しいんですよ」。大麻だけではなく、この辺りはシルクロードならぬポピー(ケシ)ロードになっているらしい。

 彼はデジタルカメラの画像を探し、「ちょっとこれ見てくださいよ」と差し出した。「コスタリカで乗ってたバスから8キロのヘロインが出てきたんですよ。犯人が誰か分からないから、冷房なしのバスに閉じこめられちゃって」。画像には、緑色の薄暗い床に巨大な枕のような袋が積まれてあった。

 「インドにガンジャ(大麻)やりに行く人がいますが、あそこは質が低くてね。質がいいのがアムステルダム。オーストラリアも結構いいですよ。でも、産地は寒いところのほうがいいんです。実は一番、質が高いのは日本のとあるエリアで採れるやつ。世界的にマニアの間では垂涎の的なんですよ」

 私はその意外な産地を聞いて驚いた。「どうやって輸出してるの?」と聞くと「よう、分かりませんけど、でも『収穫の秋』って合い言葉があるらしいですよ」と、含むように笑った。

 「大麻をやると覚醒して感覚が冴えるんですけど、それだけじゃなくて気持ちが平和的になりますねん。なぜかというと、女性ホルモンが増えるらしいんです。人類の歴史は戦争の歴史ですけど、女性が主導した国家で戦争をしかけた歴史、ないでしょ。鉄の女、サッチャーのフォークランド紛争がありましたけど、アルゼンチンが入り込んだから防衛したまでで、英国はアルゼンチンには攻め入っていない」

 「世界中の国が大麻を解禁すれば、地球から戦争はなくなりますよ。でも、そうなると人々は競争社会や資本主義的価値観に魅力を感じなくなったり、労働者も働く意欲なくしちゃうかもしれませんね。経済大国、日本の地位も、大麻を解禁すればなくなりますね。だから政治家はドラッグを許さないんでしょう」と、持論を展開する。