『日本消滅』という小説を思いついた。題名からも分かるとおり、小松左京氏の大ベストセラー小説『日本沈没』のパクリ、もしくは変奏である。

 『日本沈没』を書いた動機について、小松氏は以下のように語っている。

 <なぜ『日本沈没』を書いたのかと言われれば、やはり「一億玉砕」「本土決戦」への引っかかりがあったからだ。

 ちょうど1963年に林房雄氏の「大東亜戦争肯定論」が出て、その種の論調が勢いを持ち始めていて、僕はどうもそれが気に入らなかった。僕だって、アメリカに対しては 「原爆を落としやがって、くそったれ」と思うし、日本が戦争犯罪国だと言われる以上にあんな負け方をしたことが悔しい。でも、あの戦争末期の「一億玉砕」「本土決戦」という空気は、どうしても肯定する気になれない。

 政府も軍部も国民も、「一億玉砕」と言って、本当に日本国民がみんな死んでもいいと思っていたのか。日本という国がなくなってもいいと思っていたのか。だったら、一度やってみたらどうだ──そこから、日本がなくなるという設定ができないかと考え始めた。

 日本という国がなくなった時に、日本人はどう生き延びていくのか。ポーランドのように、歴史上、国がなくなったケースはいくらでもある。たまたま幸運にも日本はそういう経験をしてこなかったが、もしそうなったら日本人はどうするのか。

 普通の小説ならできないが、「ヒストリカル・イフ」を使ったSFなら、そういう設定で書ける。国を消すことで、日本人とは何か、そもそも民族とは何か、国家とは何かということを考えることができる。そのためには日本列島そのものを沈めてみたらどうか──そういう着想が浮かんだ。そこに地球物理学の新しい理論が、ちょうど登場したというわけだ。>

 (『SF魂』小松左京著、新潮文庫)

 『日本沈没』は上下巻を合わせて400万部のミリオンセラーとなり、映画も大ヒットしたので内容を知らない人はいないだろう。

 私が構想中の『日本消滅』では、日本列島は現状のまま存在し続けるが、主権国家としての日本国が消滅する。

 思いついたばかりなので、ボコボコに穴の開いたストーリーを公表するのはみっともないが、そこはどうかお見逃しいただきたい。