とりあえず墓を買って

 最近、麻布十番付近にある鍋島家の菩提寺とも言われる名刹に墓地を買った。まだ、墓石は建てていない。作曲家の三枝成彰氏から勧められたからであるが、三枝氏は堀紘一氏から勧められたとのことで、春まだ浅いある日に三枝氏の案内で墓地を確かめに行ったとき、その場で購入を決めた。家内が「果物を買うように簡単に決めるわね」とあきれて見ていた。

 同じ墓地に三枝・堀両氏が購入した墓地が並んでいる。その隣は良く存じ上げている高名な女流作家で、小生の背中側は与謝野馨前財務・金融担当大臣である。小生の前方に音楽家の坂本龍一氏のがある。

身体に起こる変化を感じだす

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与謝野馨・元経済財政担当相(参考写真)〔AFPBB News

 ことし4月、麻生総理の春の園遊会に招かれた時、新宿御苑で与謝野大臣夫妻にお会いし、「同じ寺に墓を購入したのですが、背中合わせなので、あの世でもよろしく。ついでに、堀紘一氏があの世でみんなに会っても仕方がないので、存命中に全員で寺に集まって花見をする計画をしてるらしいです」と申し上げたら、「あそう。あはははは」と笑って取り合ってもらえなかった。

 墓地を買ったといっても必ずしも、死期が近いと感じたわけではない。もっとも、今年68歳になるので十分、老人である。いつお迎えが来てもおかしくないが、死後に家内や子供に迷惑をかけたくないと思ったから購入しただけのことである。

 65歳過ぎた頃から自分の肉体に起こる変化が感じられるようになったが、それは誰でも同じと思うが、ほとんど自分だけに分かることであり、口にしたことはない。

 他人は小生を見て元気ですね、やはり、昔、鍛えた人は違うなどと言うが、狭心症を患ってカテーテルで心臓部の血管にステントを挿入していることや、胆石があり、絶えず超音波で大きさを確かめる必要があるといった症状を持っていることは口にしないので誤解もされる。

 いずれ動けなくなるまで現在のペースが続けば良いなあと思って過ごしてきたが、いずれ自分の存在価値が低くなり、世間から忘れられて静かに退くという日が、そう遅くない時期に来るのであろう。それまで自然体で過ごす以外に方法はないようである。

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 他方、この年になって振り返ると自分は随分と恵まれた人生を過ごしていると思うことが多い。防衛大に入って自衛官になろうと決心したのは若気の至りで、実際には、自衛官はあまり向かなかったかもしれない。

 決断が早いのは取り柄だが、よく考えたらもっと良い方法があったなあと、しばしば思うのは、そもそも指揮官不適ということである。自分が死地に行くだけの勇気があったかどうか自信がない上に、部下を死地に追いやることは到底出来そうにないという性格も指揮官不適ということに違いない。

 それでも若い頃は一流の自衛官になろうと真剣に思っていた。やがて指揮幕僚課程に入って自分には指揮官としての資質に欠けると思い知ったが、それは誰にも言えずに市ヶ谷の学校から部隊にもどった。