FRB議長、金融機関救済案の早期可決を要請 米議会で証言

バーナンキFRB議長、次の一手は?
AFPBB News

 17日に米サンフランシスコ連銀のホームページに掲載された「FedViews」で、同連銀の上級調査担当者は、FFレートがゼロ金利に近い水準にある場合のFRB(米連邦準備理事会)による追加緩和策として、以下のような「3つの戦略」を提示した。過去に日銀が行った政策や、これまでにFRBが行ってきた政策を総合した論考であり、注目に値する。

(1)低金利を維持するというコミットメントの提示
(将来の金融政策運営に関する市場の期待に働きかけることで、長期金利を低下させるとともに、その他資産の価格上昇を促す狙い。「かなりの期間にわたって維持する」のような条件なしと、「金融状況が安定するまで」のような条件ありの2種類がある。FRBは2003 年に前者を採用。後者を採用した日銀の時間軸は10年債利回りを1%未満に押し下げることに成功した、とサンフランシスコ連銀論文は解説)

(2)FRBのバランスシート構成の変化
(国債を売却して、CP、社債、エージェンシー債、外国の国債などを大量に購入すること。今回の金融危機の当初13カ月、すなわち2008年8月までの間、FRBはこの戦略を実行した。しかしその効果は不明確なままである)

(3)FRBの積極的なバランスシート拡大=「量的緩和」
(準備預金量を拡大すること。9月からFRBはこの戦略を採用した。民間部門が貸し出しを追加的に行うことにつながるかもしれない。バランスシートの規模が拡大することで、2つめの戦略による効果も増大する)

 論文は最後に、上記のうち(2)(3)の戦略を続けていく上で、問題点が3つあるとしている。まず、量をベースにした政策の効果が不確実であること。次に、ガバナンスの観点で、ニューヨーク連銀に対する金融市場調節方針の指示をどう行うかという問題がある。いずれかの時点でリザーブターゲット(準備預金目標)を金利目標に付加するか、あるいはそのまま移行するのが適切かもしれない、と論文は指摘している。最後に、市場との対話の問題。FOMC(米連邦公開市場委員会)声明文は準備預金量についての議論を含むものに変更しなければならないかもしれない、という。

 この論文は個人の見解であり、サンフランシスコ連銀の見解を代表するものではない、という断り書きが最後についているが、FRBの金融政策運営のあり方について一石を投じたことは間違いあるまい。12月FOMCでおそらく 0.5%の追加利下げが決まる頃から、上記論文が提示した論点が、FOMC内で真剣に議論されることになると予想される。

 ちなみに、地区連銀総裁から最近出てきた、今後の米金融政策の緩和余地に関する発言には、以下のようなものがある。ゼロ金利政策には懐疑的で、小幅プラス金利のまま量的緩和を推し進めることを是としている心証を抱かされるものが多い。米国の場合、MMF(マネー・マーケット・ファンド)市場の存在感が大きく、この市場からの資金大量流出につながりかねないゼロ金利政策は採用しづらいという事情もある。

◆サンフランシスコ連銀イエレン総裁「(FFレートは現行の1%を)わずかに下回る可能性がある」「(バランスシートを劇的に拡大しているのでFFレートを)ゼロにする必要はない」(10月31日)

◆ダラス連銀フィッシャー総裁「(金利は)ゼロ圏に近付きつつあり、すでに量的緩和を始めている。われわれのバランスシートは膨張しており、年末までに3兆ドルに達しても驚きではない」(11月3日)

◆アトランタ連銀ロックハート総裁「理論的には、政策金利をゼロに引き下げることもあり得る」(11月7日)

◆フィラデルフィア連銀プロッサー総裁「FFレートをゼロに向けて低下させることには、様々なテクニカルな問題がある。対処が必要な多くの問題が生じる」「政策や市場機能にとって、これが何を意味するかを考慮する必要がある」(11月13日)

◆カンザスシティー連銀ホーニグ総裁「FRBはできる限りのことをほぼ行ってきた」(11月17日)