「インフレはいついかなる場合も貨幣的な現象だ」――。経済学の大家ミルトン・フリードマンはこう指摘した。これに対し、「今の日本におけるデフレは政治的な現象だ」と言いたくなる。
鳩山由紀夫政権が2009年11月20日の「デフレ宣言」に至るまでの経緯を、やや長い視点から振り返ってみよう。
フリードマン「インフレは貨幣的な現象」〔AFPBB News〕
1970年代に2ケタのインフレに悩んだ米国経済を目の当りにしたフリードマンの名言をそのまま引っくり返し、日本のポスト・バブルの経済低迷期に当てはめ、「デフレは貨幣的な現象である」と主張したのが2000年頃の竹中平蔵氏らである。
そして当時、「デフレ宣言」も行われた。しかし、命題は「逆必ずしも真ならず」であったのか。それとも、当時の物価下落の程度では経済学的なデフレと言えなかったのか、理由は色々あると思われるが、とにかくいくらお金を供給しても物価は押し上げられなかった。
その後の景気がなだらかに回復していく過程でも、物価は総じて落ち着いていた。原油価格が上昇した2007年頃にようやく、「インフレ」という言葉がマスコミで復活する。
低価格路線を突き進むユニクロ〔AFPBB News〕
ところが、2008年9月のリーマン・ショックを境に景気が下降線をたどると、多くの小売業が低価格路線を選択した。実際、ユニクロに象徴されるように、品質を落とさず価格を下げながら、売上高と収益を上げる戦略が成功を収めている。
もちろんこの背景には、仕入れや契約工場に対する管理手法の改善、牛丼チェーン店に見られるメニュー絞り込みなど、サービス業を中心に血の滲むような生産性向上の努力が積み重ねられている。
ところが、マスコミはこの不景気と物価がジリジリと下落する事態を安易に「デフレ」と報じている。悪意を持って傍目から見ると、広告費激減で経営危機に直面する自分たちの業界には生産性向上の工夫がないため、マクロ経済の現象にすり替えたのではないかと勘繰ってしまう。
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