(2009年12月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ガスの供給停止は文字通り、東欧諸国の人々を震え上がらせた(写真は今年1月、零下10度にまで気温が下がったブルガリアの首都ソフィアで、暖房用の薪を運ぶ男性)〔AFPBB News〕
黒海に面したブルガリアの都市、ヴァルナの学校で校長を務めるダニエラ・イグナトヴァさんは、昨年冬のショックをまだ鮮明に覚えている。ちょうど雪が降り始めた頃にガスの供給が止まり、政府が「危機的な状況にある」と警告を発したのだ。
「ヴァルナの町も、私の学校もパニックになりました。でも今思うと、実際に起きたことよりパニック自体の方が怖かったように思います。休校にせざるを得ませんでしたが、たった1日で済みましたからね」
今年も冬がやってきた。しかし、イグナトヴァさんの手元にはガス会社から1通の手紙が届いている。「緊急時対策」が講じられており、今年の供給は「保証されている」という内容だ。
今年は欧州中のエネルギー会社が同じような約束をしている。大陸諸国はまだ景気後退から脱しておらず、供給可能なガスが豊富にある。備蓄タンクも満タンだ。片や欧州連合(EU)は、域内の国々を結ぶ新しいガスパイプラインの敷設を促進している。今冬にはハンガリーとルーマニアを結ぶパイプラインが開通する。ブルガリアとルーマニア、ギリシャを結ぶルートも計画されている。
供給危機の再来は完全には排除できない
にもかかわらず、東欧については、ガスの供給危機に再び襲われる可能性を完全には排除できない。原因は昨年の冬と同じ。欧州にとって最大の天然ガス供給国であるロシアと、そのロシアから輸出される天然ガスの80%が通るウクライナとの紛争だ。
EUの首脳が先月、ストックホルムでロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領に会った際、エネルギー問題は最も重要な議題に位置づけられていた。EUの首脳は12月4日、ウクライナの首都キエフを訪問するが、そこでもエネルギー問題が同様に取り上げられるだろう*1。
ロシアもウクライナも、今年の供給は通常通りだと約束しているが、ウクライナでは政治的な緊張が高まっている。親欧米的な政権が誕生した2004年の「オレンジ革命」以来となる大統領選挙が来月に予定されているためだ。
近々その任期を終える欧州委員会のアンドリス・ピエバルクス委員(エネルギー担当)は、先月の記者会見で次のように語っていた。欧州委員会はロシアの天然ガス供給に関する危機の再来を回避するためにあらゆる手を尽くしたと考えているが、「未解決の問題も残っており、危機が再来する可能性はあると思う。我々が(さらなる)対策を講じているのはそのためだ」
*1=4日の会談では、EU側がウクライナにロシアとのガス紛争の再発防止を要求した
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