筆者のメル友、群馬県高崎市在住の石田望氏(86)はご自身のブログでこんな分析をしている。「日本では老人割引は『お上からの老人に対するお恵み』なのだ。長年働いてきた老人に対する感謝の気持ちはない」「(日本とスウェーデンで)『福祉』についてもこんな根本的な考え方の問題があるのではないかと考える」――。筆者も全く同感だ。
スウェーデンでは「福祉」という言葉を基本的に使わず、「社会サービス」と言う。これには「救済的なお恵み」「お情け」というような語感はほとんどなく、「権利として生活の質を保障する」という意味合いが強い。スウェーデンと日本の間に横たわる根本的な違いがそこにあると思う。
退職年齢、65歳→68歳に引き上げるべきか?
高齢化問題に苦悩するEU諸国(参考写真)〔AFPBB News〕
現在、スウェーデン国内で賛否両論が激突しているのは、退職年齢を65歳から68歳に引き上げるべきか否かという問題だ。
スウェーデンはイタリアと並び、欧州では高齢化が最も進んでいる。65歳以上の年齢層が全人口の18.2%を占めており、中央統計局は2040年までに25%に達すると推定している。
世界で最も高齢者サービスが充実している国だけに、これを支える財政負担は膨大だ。子どもや学生、高齢者など働いていない70人を、働く100人が支えているのが現状だ。中央統計局によると、向こう20年間で働いていない人の割合は80人に上昇する。これを支えるには20~64歳の勤労人口を大幅に増やす必要があるが、それは期待できそうにない。
このため、移民労働力の参入割合を増やすべきだとの指摘もある。だが、他のEU国家もほぼ似たような状況であり、必要な労働力が膨大になるため、長期的には十分ではないという。唯一の現実的な方法は、退職年齢を引き上げることだ。
野党の社会民主労働党が率先して「退職年齢引き上げ」を叫んでいるが、国民からはあまり支持されていないようだ。年金基金の運営機関の調査によると、引き上げに賛成しているのはわずか20%。それどころか、90%の人が60歳以前に退職したいと考えている。
この問題がどの程度影響しているのか分からないが、最近の世論調査では社民党の支持率が3割を割る水準まで急落した。「長く働くか、それとも福祉をあきらめるか」という究極の選択にどう決着をつけるのか。まだまだ結論が出そうにない。
高齢者を人材派遣、実績とスキルを有効活用
「ベテラン・プール」のオフィス(スウェーデン・ボロース、筆者撮影)のんびりした悠々自適の生活に飽き足らず、退職後に起業する高齢者も少なくない。人材派遣会社「ベテラン・プール」もその一つだ。引退した人が持つ長年の実績とスキルを有効活用しようというコンセプトで設立。パートタイム雇用の従業員は全て定年退職者であり、顧客ニーズに合わせて適切な人材を派遣している。
家の掃除、窓拭き、ペンキ塗り、芝刈り、買い物、引っ越し手伝い、旅行中の花木への水やり・・・。ベテラン・プールの請け負う仕事は主に家庭内のサービスだが、中小企業の繁忙期には電話番や配達、会計、棚卸しなどを手伝うこともある。
ベテラン・プールのオフィス第1号は、2007年秋にスウェーデン南西部のクングスバッカで誕生した。急成長を遂げ、今ではフランチャイズ方式で全国に20を超えるローカルオフィスを構える。大きな都市では第2、第3のオフィスも開設している。
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