10月下旬に、中国の投資環境調査のため、上海と北京に出張した。中国市場をターゲットとする日系企業や、調査機関のエコノミストを中心にヒアリングを行って感じたのは、内陸部に向けて息の長い消費拡大トレンドが始動した強いダイナミズムである。

 もちろん、欧米発の金融危機を乗り越えるための中国政府の経済対策が、「ひずみ」を生み出しているのも事実だ。ただ、そうした対策は、今世紀に入ってからの所得増加によって蓄積されてきた都市住民の購買意欲を、一気に顕在化させる呼び水となり、それは、着実に内陸部に広がっていっている。

中国経済の回復基調が鮮明に

北京の街角  筆者撮影

 出張中の10月22日、中国国家統計局が発表した7~9月期の実質GDPは、前年同期比8.9%増となった。4~6月期のGDP7.9%増で既に景気の底打ちが確認されていたが、公共投資を柱とする4兆元の景気刺激策や金融緩和の効果で、中国経済が世界に先駆けて急回復していることを、改めて強く印象付けた。

 その後の調査機関等との意見交換では、「引き続き政府主導の投資が牽引役だが、消費の盛り返しと外需回復の兆しが見えてきた」との声が聞かれた。前期までの「外需の落ち込みを公共投資が穴埋めする」構図から一歩前進、自律的成長の要素が読み取れるようになってきている。

 急回復の背景にあるのは、政府主導の鉄道・高速道路を中心としたインフラ整備だ。しかし、それと並んで、2009年上半期だけで前年の1.5倍に相当する貸し出し増加が実施された超金融緩和の果たした役割が大きい。

 潤沢なマネーは不動産市場に流れ込んで市況の回復を促した。住宅価格がもう一段、低下することを期待して「買い待ち」をしていた潜在的購入者たちは、2009年2月を底に価格反転の兆しを見て取るやいなや、慌てて、購入に動き出した。