東京都中央卸売市場築地市場の豊洲移転問題が大きな山場を迎えようとしている。

 豊洲に市場が移転した場合、物流の大動脈となる予定となっているのが「東京都市計画道路・環状第2号線」(以下、環状2号線)である。その工事は中断していたのだが、2011年6月になって突如、着手された。

 これに、移転に反対する市場関係者は色めき立っている。スンナリと工事は進みそうもない雲行きなのだが、東京都も工事を強行する姿勢を変えていない。 

毒物で汚染されていた移転候補地

 築地市場の江東区豊洲への移転は、石原慎太郎・東京都知事が「昭和からの宿題」と位置づけて、執念を燃やしてきた計画である。そもそも築地市場の豊洲への移転は、1999年に石原慎太郎氏が東京都知事に初当選してから急速に現実化してきた計画なのだ。つまり、豊洲移転は「石原知事の計画」である。

 しかし、その移転計画は長らく足踏み状態のままだった。理由は、豊洲の移転予定地が「日本で最大級の土壌汚染地」であることが発覚したからだ。

 2007年の土壌汚染調査では、56の対象地点のうち25地点から、環境基準を超える発ガン性物質のベンゼン、シアン化合物、猛毒であるヒ素および鉛が検出されている。ベンゼンに至っては環境基準の1000倍、シアン化合物も80倍にも達していた。

 これほどに土壌が汚染されていたのは、ここが、東京ガスが石炭や石油からガスを製造する工場の跡地だったためである。汚染は想定内のことであって、東京ガスが東京都に土地を売却する際にも汚染していることは報告している。にもかかわらず、石原知事は豊洲移転を撤回してこなかった。

 2007年の土壌汚染調査の結果に石原知事は「びっくりした」と感想をもらしながら、あくまで豊洲移転を強行する姿勢を崩していない。「汚染は処理できる」というのが東京都の言い分だ。

 だが、そこには多くの疑問が示されているにもかかわらず、都は十分な説明をしてきていない。それどころか、移転反対派が土地の独自調査を申し出ても頑なに拒否しているのが事実だ。「大丈夫」と言いながら、実態を見せようとしないのだ。東京電力福島第一原子力発電所事故での東電と国の対応と共通するところがある。