ドイツのBIO食品の話題に前回触れましたが、2011年に入ってから、BIO食品は少なくとも2回、不思議な形で大きく話題として取り上げられました。

 日本では震災以後、とりわけ福島第一原発問題で、食料品への影響が出始めた頃、放射性物質ではありませんが、食を巡って微妙な問題がわき起こりました。

病原性大腸菌O-104

食中毒相次ぐドイツで新たに4人死亡、キュウリの病原性大腸菌汚染が原因か

病原性大腸菌汚染の疑いを受け、野菜を廃棄するドイツ・ハノーバー近郊の農業生産者(2011年5月27日)〔AFPBB News

 5月に入り、日本では連休も明けた15日頃、ドイツでは「腸管出血性大腸菌」O-104の感染例が報告されました。

 それから短期間のうちに、O-104の症例が多数報告され、5月末には死者15人を数えるまでに拡大します。政府は緊急会議を開いて有効な対策を検討しました。

 ここで1つ、問題になる情報が出てきてしまいました。 

 5月下旬の段階で、ドイツの衛生当局は「スペインから輸入されたキュウリから、病原性大腸菌が感染した」と発表したのです。

 実際にはこのキュウリ、市が回収する「有機ゴミ(Bio Abfall、 BIOゴミ)」の中に混ざっていたものから大腸菌が見つかったものに過ぎなかったのですが、「スペインのキュウリはヤバイ」といううわさ、さらには「BIOゴミ」が「BIO食品」と混同されて「ビオのキュウリが原因」などといった風評被害まで出てしまいました。 

 ドイツのこの発表によってベルギーやロシアなども「スペイン産キュウリ」の輸入を停止します。これに猛反発したのは、当然ながらスペイン政府でした。事実無根である、風評被害による損害賠償請求も辞さない、という対立構図になってしまったのです。 

錯綜する「病原野菜」情報

 この中毒騒ぎでは、ドイツ全土で1500人以上が中毒症状を起こし、そのうち500人近くが重症という、感染症の蔓延でも規模の大きい部類に入ります。

 ちょうどこの時期。私はドイツ連邦共和国政府の招聘で「死刑を巡る国際対話」というものに参加していましたが、外務省の高官なども会食で出てくる生野菜を食べないようにしていたのが印象深かったですね。

 病原性食品として当初はスペイン産のキュウリだ、という情報が喧伝され、次にトマトやサラダ菜もヤバイという話になったのですが、しばらくするうちに、いずれもガセネタだった、ということになり、トマトやキュウリ、サラダ菜を食べないように、という政府からの勧告は取り下げられました。

 これに代わって犯人と報じられたのは豆と豆の発芽したもの、つまりモヤシの仲間でした。アルファルファの芽などがいけない、ということになり、そうしたものを食べるな、あるいは、それらと触れた可能性のあるほかの野菜も食べないように、という情報が広く流布されました。