(2009年10月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ブルーラグーンを訪れる人の大半は外国人観光客〔AFPBB News〕
アイスランドのブルーラグーンは活況を呈している。漁村グリンダヴィークを見下ろす溶岩原にあるこの温泉では、先日、数十人の観光客が日暮れ時まで地熱温泉を楽しんでいた。
客の大部分は外国人観光客。昨年の銀行崩壊でアイスランド・クローナが急落して以来、大幅に伸びている外国人観光客――今年8月の外国人観光客数は前年同月比12%増――の一部がここを訪れているのだ。
だが、観光産業の活況はいくら歓迎すべきものであっても、北極圏の端に位置する、危機の嵐に見舞われた島の暗い経済展望の中では、極めて珍しい朗報に過ぎない。
今からちょうど1年前の10月6日、ゲイル・ハーデ首相(当時)は国営テレビで、国の銀行セクターの「おとぎ話」のような成長が悪夢のような結末を迎え、アイスランドは破綻の危機に直面していると宣言した。それから2日間で国内大手銀行3行――ランズバンキ、グリトニル、カウプシング――がすべて国営化され、国は外国の救済者にすがる羽目になった。
かつて、国民1人当たりで見た場合、世界有数の富裕国だったアイスランドは、世界的な信用収縮の最大の犠牲者となった。金融の規制緩和と自由に流れる国際資本、そして「バイキング(侵略者)」とも呼べる世界制覇を狙う無謀な起業家という有毒な組み合わせが、いかにして国を凋落させ得るかを示す研究材料である。
そうである以上、同国の景気回復に向けた進展も新たな実験となる。今度は、壊滅的な被害を受けた経済をいかに再建するか、という実験だ。
国の規模以上に大きな意味を持つアイスランドの命運
こうした広い意味での重要性を考慮しなかったとしても、アイスランドの命運は、国の規模が示す以上に重要な意味を持つ。アイスランドは世界100番目の経済国の地位を赤道ギニアと争っており、32万人という人口は、欧州連合(EU)で最も規模が小さい加盟国ルクセンブルクの3分の2程度だ。
だが、危機が起きるまでの10年間で、アイスランドの銀行業界の資産規模は国の年間GDP(国内総生産)の10倍まで膨らみ、「アイスランドのオリガルヒ(新興財閥)」とも呼ばれるようになった、金融帝国を築いた実業家たちによる熱狂的な海外進出の発射台となった。
金融帝国が倒れた時、欧州の多くの投資家が2次的な被害を被ることになった。混乱の中で失った数十億ユーロ、数十億ポンドのカネを取り戻そうとする外国の債権者にしてみれば、アイスランドの再建に多くがかかっているのである。
欧州と北米の外務省筋も事態を注視している。というのは、欧米同盟の文字通り真ん中に位置する北大西洋条約機構(NATO)加盟国の地政学的なよりどころに、危機が大きな重圧をかけているからだ。
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