(2009年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
危機を無駄に終わらせることだけは避けなければならない。
ラーム・エマニュエル大統領主席補佐官(写真は2007年当時)〔AFPBB News〕
ラーム・エマニュエル大統領首席補佐官が信用収縮に関して示した「この好機を逃してはならない」という含蓄ある見解は、既に政治の辞書に載っている。だが、主席補佐官のこの訴えは、金融の大崩壊によって投資家、貯蓄家、住宅所有者、納税者が抱え込むことになった巨大な損失に対して全世界の規制当局がどう対応しているかを測る、最良の物差しにもなる。
昨年のリーマン・ショックが国民の意識から遠のきつつある今、専門家の中からは、規制のシステムを整頓し直し、投資家保護を強化する千載一遇の機会がこのまま失われてしまうのではないかと憂慮する声も上がっている。1929年の大恐慌以来最大だった今回のバブルとその崩壊を二度と繰り返さないために、なすべきことは十分に行われたのだろうか?
プラスの面としては、2007年8月に金融不安が拡大し始めて以来、中央銀行と規制当局――彼らが資産価格の高騰と暴落に加担したと一般に考えられている――の考え方が大きく変わったことが挙げられる。
つまるところ、株式市場と債券市場は彼らの手の内にある。だから、彼らの考え方の変化は重大なことなのだ。彼らは長い間、金融政策の引き締めは消費者物価がインフレを起こした時にのみ実施すべきであり、資産価格のバブルや財政不均衡は関係ないと考えてきたが、その考えは今、捨てられようとしている。
「中央銀行は最後の貸し手」という考えは死んだ
金融システムの脆弱性をかなり早い段階で強く指摘していたロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのチャールズ・グッドハート教授は、中央銀行の役目は最後の貸し手となることであるという、19世紀の経済学者・憲法理論学者のウォルター・バジョットによって確立されたこれまでの考え方は死んだ、と断言する。
バジョットは、支払い能力はあるけれども現金の不足した銀行だけに適切な担保を取って貸し付けることを説いたが、現在政府はそれどころか、全体にわたる包括的な保証を――セーフティーネットができるために大きなリスクを取りやすくなるというモラルハザードが生じるにもかかわらず――提供している。効率的市場仮説と「ライトタッチ」規制への信仰も、同様に消え去った。
とりわけ、金融システムを公共部門の簿外債務として運用し続け、納税者に破綻のツケを回し続けることはもう不可能であると政策決定者が認識したことは大きい。オバマ政権が6月に発表した規制改革の声明は、政府の提案が「これらの企業に、今までは社会に押し付けることができた事業失敗の際のコストを必ず内部に組み入れるよう求めることになる」としている。
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