自動車メーカーの収益性が世界的に低下している中、日本メーカーにとっては国内販売の収益性の改善も急がなければならない。

低迷続く国内販売にリストラもまだ不十分

 2000年代に入ってから、日本の自動車メーカーの海外販売台数は着実に拡大してきたが、国内市場は低迷を続けている。市場規模と販売店舗数の関係を見ると、店舗数の調整は進んでいるものの、いまだに過剰感つまり高コスト構造が残っていることは否めない(図1参照)。

右肩下がりが続く国内の新車販売。販売拠点数も削減が進んでいるが販売の落ち込みに追いつかない

 筆者はかねて、日本の自動車流通の仕組みは、メーカー、ディーラー、ユーザーという3者間の関係がシステム安定を構築しており、変化すべきことは分かってはいても、その全体システムは容易には変化しがたいと考えてきた(『情報革命と自動車流通イノベーション』共著、文眞堂、1998年。武石彰、川原英司「システム安定とディーラーシステム」『ビジネスレビュー』 Vol.41、1994年)。

 販売体制の規模縮小や販売チャネルの統合などが起こったものの、その基本構造は今も変わっていない。メーカーの系列ディーラーが流通を支配する構造は変わらず、他の業態としては、そのディーラーが卸売りや仲介手数料により販売を委託する「業販」という形態でのみ存在する(一部大口向けのメーカー直販は存在する)。

 しかしながら世の中は変化している。例えば、A.T. カーニーの試算では、2020年には、プラグインハイブリッド車と電気自動車(EV)を合わせると、世界の自動車販売の10%を占めるようになると予測され、その後のEV時代に向けた変化が始まろうとしている。

 販売ネットワークは、こうした変化の中にあっても、まずは、販売ネットワークは現在の延長で変化しつつ、一方で、将来の新しい自動車の流通の姿を模索していかざるを得ない局面にさしかかっているといえる。

 今回は現状延長の改革の考え方について考察を行うと同時に、それに加えて、長期的視点として、EV化の新しい自動車産業の時代に向けた変化の方向性についても考察してみた。

これまでの延長で、販売ネットワークを最適化するには?

 自動車メーカーとしては、2つの意味で、販売ネットワーク最適化の検討を進めてきた。1つは、販売チャネルを通して市場を活性化し販売台数を増やしていくため。もう1つは、縮小した市場規模に適合させ固定費を削減するためである。

 前者の販売拡大ための手法には大きく2つある。販売店間の適度の競争を促進し自律的に切磋琢磨する販売努力を維持することがまず1つ。そしてもう1つが、販売チャネルの取り扱い車種数を限定して「売れない商品」の比率を抑え、一つひとつの商品をしっかりと販売していくことである。