今、鉄砲伝来とロケットで有名な種子島に来ている。この島は鉄砲とロケットだけではなく、なんと食料自給率700%という農業が盛んな島でもある(食料自給率については議論が活発になっているが、その件については別の機会に改めて取り上げたい)。

 7月22日に掲載したコラム(執筆は弊社の杉山)で、「焼き芋にすると最高の芋」として、爆発的な人気になってきている種子島の「安納いも」を紹介した。

 その人気はますます高まっている。今年の耕作面積は前年と比較すると50~70%増。生産者も急増しており、1年間で数十人が新たに安納いもの栽培を始めた。そして加工商品づくりへの取り組みも本格化してきている。まさに、安納いもにより種子島の農業と島経済は確実に活性化してきているのだ。

耕作面積は増えたが、甘さにばらつきが

 ところが新たに栽培を始める人が増え、耕作面積が増えるということは必ずしもいいことばかりではない。なぜならば、新たに作る人や場所の中には、品質が他のいもよりも良くないものが含まれる危険があるからだ。

 実際に、昨年度に収穫したいもの糖度を安納いもブランド協議会で測定してみたところ、最高は16度という非常に甘い芋があったが(ちなみにメロンは12度くらい)、最も低いものは8度。つまり甘さでは高いものと低いもので2倍もの開きがあるという結果になってしまった。

 これでは、甘い芋と信じて買い求めたものの、「裏切られた」とがっかりしてしまう人もいるだろう。こうした品質のばらつきがあっては、安納いものブランドが失墜してしまう。ブランドを構築するには、決して消費者を裏切ってはいけないのだ。

 そこで今、「安納いも」の基準作りが進められている。

 ポイントは、いくつかある。1つは産地に関する基準。これは「安納いも」の人気の高まりに着目した人が種子島以外に安納いもを持ち出し、栽培を始めるというケースが後を絶たないからだ。そこで島固有の「知的財産」である安納いもの産地として、種子島に限定するのが不可欠だ。

 第2に品種と名称。これまで様々な品種や呼び方がされていたため、混乱が生じていた。そこで種子島では「安納紅」と「安納こがね」という2つの品種に限定し、統一した名称「安納いも」と呼ぶことにした。これらの品種の栽培用の苗は、種子屋久農協が一括管理することにしている。

 第3に糖度や形などの品質である。たとえ種子島で作られたいもであっても、品質や形が規定を満たさない場合には「安納いも」とは呼ぶことができないようにする。こうした基準があれば、消費者は安心して購入することができる。

 もちろん、その品質基準を達成するためには、栽培方法、肥料、作付け時期、収穫後の熟成方法などを守らなければならない。そのための指導を徹底して行い、高い品質のものを作っていくことが、安納いものブランド化には不可欠なのだ。