朝日新聞の社説(2009年7月23日付朝刊)の一節をまず引用しよう。「マニフェスト」と銘打ったものである。

マニフェスト報道への違和感

 「『公約』を辞書で引くと『守られないもののたとえ』とある。そんな笑い話をどこかで聞いた人も多かろう。当たり前のように自民党政権が続いた時代の公約は、さほどの重要性はなかったとも言えるかもしれない。結局は『任せてくれ。悪いようにはしない』と言うに等しいような公約がまかり通った。それではいけない、と民主党が音頭をとって、2003年の総選挙から国政選挙に導入したのがマニフェストだ」

 なるほど、過去の公約は「守られない」ことが当たり前だったし、今、各党が掲げている「マニフェスト=政権公約」は、そんな過去の公約とは別物であるということらしい。

 今回の衆院選では、各党の掲げるマニフェストにひときわ注目が集まっている。

民主党、衆院選マニフェストを発表

民主党のマニフェストを発表する鳩山由紀夫代表(7月27日)。民主党のマニフェストはこちらAFPBB News

 これまでの選挙報道では、自民党や民主党が公約に何を掲げても、新聞の1面トップを飾ることなど皆無だった。

 「マニフェスト検証」なる集会も、各紙とも1面トップで扱った。検証している団体名を見ると、どんな活動をしているのか定かでないところもある。ここに名を連ねている団体が、何かの提言を発表したと想像してみればよい。政治面の片隅にベタ記事で載せてもらえばましな方だろう。それなのに、マニフェスト検証と銘打つと1面トップだというのだから、驚きである。

 筆者は、この盛り上がりように何とも言えない違和感を抱いている。

 試しに各党のマニフェストを手に取ってほしい。どの政党のそれも、かつての公約と大して変わらない標語調の文章がずいぶんと目につく。確かに、財源や実施時期を書いてある項目もある。だが、数の上では、やはり標語調の項目の方が多い。

 マニフェストは過去の公約とは別物だという “色眼鏡” で見るから、そう見えるだけなのではないだろうか。しょせん同じ程度のものと思って見れば、印象はずいぶんと異なってくるように思う。

 そして、各党のマニフェストが「守られないもののたとえ」に毛の生えた程度のものという認識になれば、マスメディアにも、1面トップで扱うことや、各種団体が検証したと大々的に報じることは行き過ぎではないか、もう少しトーンを抑えて報じようと自制する声が出てこよう。それゆえに、マニフェスト選挙そのものについての判断、評価が極めて大事だということになる。

 マニフェスト選挙によって、選挙のあり方は以前よりもよい方向に進歩しているのか、それとも本質的には大きな変化はないのか。まず、そこから検証してみるべきではないだろうか。各党マニフェストに対する検証だけでなく、マニフェスト選挙そのものも検証作業の対象にする必要がある。筆者はそう考える。