1972年にそのプロジェクトは始まった。「新エネルギー技術開発総合計画(サンシャイン計画)」だ。

 当時、通商産業省(現経済産業省)では、毎年「新政策」というものをやっていた。翌年度予算要求のための新しい政策について省内全員で「アイデア出し」をするのだ。正式には4月から始めるわけだが、各課とも2月頃から準備を始める。

 外国の新聞・雑誌・学術誌に載っている記事を読みあさり、大学の先生に相談し、所管の団体、企業に話を聞き、自課のOBなどに会いに行ったり、来てもらったりして話を聞き、ありとあらゆる知識を総動員し、次の年に実行すべき政策を考えるのだ。

 その際、他省庁の政策も大いに参考になる。「○○省がこんなプロジェクトをやっている。我々も負けるな!」というわけだ(その意味では省庁間の縄張り争いは悪いことばかりではない。競い合って政策を進化させるというメリットもある)。

 4月になるとそれらのアイデアをまとめて各局の総務課に提出する。局として何も新しい政策を打ち出せないようでは「あの局の総務課長は無能だ」という烙印を押されてしまうので、各課の課長の尻を一生懸命叩く。だから局内の課長のアイデアコンテストのような様相になる。ありったけの知恵を出して頑張る。

 総務課が局内のアイデアをまとめ、予算獲得の可能性、政策としての優先順位などを勘案しながら、局としての「次年度新政策」をまとめる。「この課の政策とこの課の政策は1つの政策にまとめた方がすっきりするな」とか、「来年、こういうことがあるから、来年度に要求する方がベターだな」等々、いろいろアレンジをして、局としての新政策を作るわけである。

 ゴールデンウイークを過ぎる頃から、今度は大臣官房のヒアリングが始まる。

 各局がまとめた来年度新政策を、大臣官房の総務課長、会計課長など幹部が聞くのだ。官房総務課長、会計課長、企画室長などは出世頭で、これから偉くなっていく可能性が高い人たちだから「普通の課長」はみな緊張する。

 アイデアコンテストだから、ろくなアイデアも出せない課長は低く評価される。当然のことだ。