私のまわりには、「ナポリタン好き」を公言する人が何人かいる。しかも気がつけば、全員男性だ。あの分かりやすい、甘酸っぱいケチャップの味が男性の舌になじみやすいからか。それとも子供の頃から慣れ親しんだ味を、より追い求める傾向にあるからか。真相は謎だ。

 実は、私は最近まであまりナポリタンが好きではなかった。

 子供の頃、週末のお昼になると、しばしばナポリタンが出た。具はたまねぎにハム、ピーマン。ケチャップと油でギトギトになった、ふやけた歯ごたえのない麺。今から考えると子供のくせに生意気だが、ケチャップの味に支配されたナポリタンに「なんちゃってイタリア料理」の印象があったのだ。

 だが、いくら本格イタリア料理が普及しても、喫茶店や洋食屋のメニューにはしぶとく生き残っている。30年近くのブランクを経て、喫茶店でナポリタンを口にしてみたところ、これが案外イケた。パスタ料理だと思うから許せないのであって、「洋風焼うどん」と思えばこれはこれで立派な一品かもしれない――そうナポリタンに対するイメージを改めたのだった。

日本のパスタ黎明期はマカロニが主流

 ナポリタンは、ナポリにはあらず。たぶんみなさんもうすうす感じているであろうが、ナポリタンは日本で創作され、一世を風靡した日本風パスタ料理第1号である。

 エッセイストの東海林さだおは、『週刊朝日』連載の名物コラム「あれも食いたい これも食いたい」で、ナポリタンの食感を絶妙に表現している。

 <口に入れればとにかくねっちゃり、そしてべっちゃり、かつ、もっちゃり、皿の上でぐっちゃり。ナポリタンは“四大ちゃり”でなければならなかった> (2003年7月18日号)

 なぜかくも、ナポリタンの麺は柔らかいのか。そのワケをたどっていくと、日本におけるパスタ受容の歴史がみえてくる。