臭いに敏感な時代だ。体臭、汗、口臭など人間の体だけではなく、部屋の臭い、タバコの臭いなど、不快な臭いはとかく嫌われる。中でも口臭は、家族以外はほとんど忠告してくれず、しかも人にかなりの悪印象を与えてしまう。

 初対面の大事な商談などでこれがあると、仕事への悪影響も否定できない。マナーとしてだけではなく、よりよい人間関係、社会生活を築くうえでも大事だし、健康とも関連が深いものなので、今週は口臭について考えてみよう。

 まず、果たして自分の口は臭うかどうか、チェックする方法がある。乾燥した清潔なコップを用意し、上下に振って中の空気を出し、コップに口をつけて息を吐き出し、漏れないようにすぐに鼻を入れ、臭いをかぐのだ。

 市販の口臭チェッカーもあるが、あまり精度は高くない。

口の中にある口臭の原因

 一口に口臭と言っても、その原因は多岐にわたる。主に、口の中に原因があるものと、体の疾患によるものとに大別される。

 口の中の原因としては、虫歯、入れ歯や差し歯、歯周病、歯石や歯垢、舌苔、口内の乾きなどがある。

 虫歯になると歯に空いた穴に食べかすが入り、それが細菌によって分解され発酵し、臭う。同様に、歯と歯の間に食べかすが残った場合でも、同じような原理で臭う。これらは、直接食物の腐敗臭が口から出るので、かなりの悪臭となる。歯の治療をすること、そして歯磨きや歯間ブラシで口内を清潔に保つ必要がある。

 入れ歯や差し歯は、汚れが溜まりやすく口臭を生み出しやすい。着けたままの歯磨きではなく、外して汚れを落とすべきだし、寝る時は外す習慣を身につけよう。

 以前は、歯槽膿漏と呼ばれていた歯周病も口臭の原因となる。ガスのような匂いがする。歯周病は、歯だけではなく、血液から体内に歯周病菌が侵入して様々な疾病を引き起こすことも指摘されているので、早期の治療が必要だ。

 舌苔は、食べ物や剥がれ落ちた舌の細胞、口内細菌などでできたもので、健康な人にもある。しかし、体調不良や不規則な生活が続いたり、甘い飲料水や刺激物を過剰に摂取した状態で唾液が減少すると、舌苔が厚くなり、口臭の原因となる。健康な人の舌苔は、舌全体がうっすらと白くなっている状態。最近は、舌苔を取るグッズがあるが、舌苔の取りすぎは逆に口臭を引き起こしてしまうので、要注意だ。

 誰にでもあるのが、口内の乾き。口が乾くと、唾液の量が減少する。唾液は、殺菌作用や口内の自浄作用があるので、これが不足すると口内細菌が増え、口臭の原因となる。ストレスが溜まっている時、緊張した場合、口を開けたまま寝ている時などは、口内が乾くので注意が必要だ。

口臭が体の異常を知らせることがある

 次は、体の病気が口臭の原因となっているケースを紹介する。

 胃潰瘍、慢性胃炎、十二指腸潰瘍などの消化器系の異常が口臭となっているケースがある。この時の臭いは、腐乱した卵のような臭いがする。

 糖尿病、慢性肝炎や肝硬変などの代謝系の異常も口臭の原因となる。特に糖尿病の場合は、尿や血液中にアセトンという物質が増え、これによって甘酸っぱいりんごの腐敗臭のような臭いがする。

 化膿性の気管支炎や気管支拡張症、肺がんなどでも口臭を発することがある。この場合は、腐敗した肉の臭いがする。慢性鼻炎や副鼻腔炎でも同じように、腐敗した肉の臭いがする。