ペルーの北部に、エクアドルと隣接する国境の町、トゥンベスがある。エクアドル側の国境の町はウアキージャスだ。
トゥンベスとウアキージャスの間はまったく国境らしくなく、検問がない。東京で例えるならば、中央区の銀座から新橋駅へ歩いていくと、気がついたら港区に入っていたような感覚である。
このエリアは人や物が行き交い、活気にあふれている。しかし、国境の町というのは昔から治安が悪いのが相場である。
カルテルが組まれているせいなのか、両替屋のレートがどこも不当とも思えるくらい高かったり、警官が規則にはない出国税を旅行者から搾取してポケットに入れるのはまだいい方で、町のゴロツキが警官の制服を着てニセ警官に扮し、荷物を背負っている人を見つけると、検査と称して荷物を調べ、金品を強奪してしまうのもよくある話である。
タクシーの窓から警官が「50ドルよこせ」
私は中米から南米へと陸路で移動していた。ペルーから、エクアドルの入国審査所までタクシーで向かう途中、制服を着た警官が車に停止するよう命じた。警官は私の顔を窓から覗き込むと「50ドルよこさねば、この道を通らせない」と恫喝する。
すると、タクシーの運転手も必死な形相で、「カネを払わないと、お前は留置所に入れられることになるぞ」としきりに金を払えと催促する。私は、この警官らしき男と、タクシーの運転手はグルなのではないのかと、いぶかしげに彼らを眺めていた。
もし、この不当な申し出を警察に訴え出るとどうなるのか。別の身に覚えの無い罪をなすりつけられはしないか、と頭に不安が過った。
タクシーは市場から少し離れた街道に停められ、人通りもなく、荷物をトランクに入れたままの私は身動きすらできない。このルートは旅行者があまり通らないようで、警官は私が財布を開くのをうかがっている。
私は、国境から午後一番に発車するバスでエクアドルの首都、キトに向かい、日が暮れる前に着きたいと考えていた。キトのバスターミナルは治安が悪く、首締め強盗の多発エリアと言われているダウンタウンにある。
タクシーが停車してから1時間後の午後12時45分、バスの発車時間が迫ってきた。私はしびれを切らして警官にカネを渡すと、その場から解放された。
プロのミュージシャンが目の前で演奏
海外では理不尽とも思えるようなことが日常的に転がっている。親切にしてくれた友人、世話をしてくれた恩人が、後で法外な金銭を要求してくることがしばしばあるのだ。
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