5日に発表された米5月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は▲34万5000人。市場予想よりも小さな減少幅にとどまった。1月に記録した▲74万1000人がボトムで、2月以降は4カ月連続でマイナス幅が縮小している。昨年秋のリーマン・ショック以降、雇用削減の動きが加速していたが、今年2月以降は落ち着きを徐々に取り戻し、安定化してきたことがうかがえる。5月は小売など各種サービス業で、雇用者数の減少ペースが鈍化した。オバマ政権が打ち出した経済対策の効果が建設業の雇用者数を押し上げた部分もあろう。3月分と4月分は上方修正された(計+8万2000人)。

 ただし、雇用者数が増加に転じたわけではないという点は、必ず留意しておきたい。雇用情勢は悪化を続けており、改善に向かってはいない。今回で雇用者数は17カ月連続で前月から減少した。これは1981年8月~82年12月に記録した過去最長記録に並ぶものである。しかし、今回の雇用者減少数の累計は▲600万1000人で、81~82年当時の▲283万8000人をはるかに上回る規模。雇用者数は6月以降も減少を続けるだろう。

 また、5月の週平均労働時間は33.1時間(前月比▲0.1時間)で、下方修正された3月に並ぶ過去最低水準である。雇用者数が増加していくプロセスとして考えられるのは、まず雇用人員の稼働率上昇を示す週平均労働時間がある程度増加し、次いで人材派遣などの一時雇用が増加し、最後に正社員を増員するという流れである。だが、今回の雇用統計を見ると、労働時間は減少基調を継続。人材派遣業の雇用者数は▲7000人(前月は▲5万5000人)で、マイナス幅は縮小したものの、減少自体は継続していた。

 今回の雇用統計における主なカテゴリー別の雇用者数増減は、以下の通り。

A.財生産部門 ▲22万5000人(前月▲27万4000人)
うち製造業 ▲15万6000人(前月▲15万4000人)
建設業 ▲5万9000人(前月▲10万8000人)

B.サービス部門 ▲12万人(前月▲23万人)
うち小売業 ▲1万8000人(前月▲3万7000人)
金融業 ▲3万人(前月▲4万5000人)
政府 ▲7000人(前月+9万2000人)