先週からモスクワの気温はぐんぐん上昇、街中にはトーポリの綿毛が舞う季節となった。 モスクワの夏の訪れである。 ロシア人はこれから夏休みまでの1カ月ばかり、1年のうちでは比較的熱心に働く時期である。

週末には多くの人出で賑わう屋外市場や電気街

週末のアルバート通り。冬(第1回の写真参照)とは打って変わって観光客でにぎわう

 週末の土曜日、市内中心から地下鉄で15分程度のところにあるルイノック(屋外市場)や日本でも有名になった電気街を見て回ったが、いずこも相変わらず多くの人々で賑わっており、経済危機の深刻さを表面上から読み取るのは難しいように感じた。

 日曜日にはモスクワ郊外の友人宅を訪ねたが、休日を郊外で過ごすロシア人のスタイルにも大きな変化はない。 郊外のロシア人と聞くと、ダーチャ(別荘)の自家菜園で野菜作りに勤しむ姿を想像するかもしれないが、最近はゴルフやサイクリング、ホテルのスパでリラックスした後、レストランで食事といった優雅な休日を過ごすロシア人も珍しくない。

モスクワ西部にあるバグラチオノフスキー ルイノック(市場)。買い物客はいつも通り

 ロシアでの夏の定番「シャシリク」(=BBQ)をご馳走になった後、やっと暗くなり始めた夜11時過ぎにモスクワへの帰途に就いたが、市内に通じる幹線道路に出た途端、ぎっしりと車が渋滞しており、ウオッカの酔いも一気に醒めてしまった。

 ところで、このところロシアでは思わず目が覚めさせられるニュースが多い。

 1つは経営破綻したゼネラル・モーターズ(GM)傘下にあったドイツ自動車メーカー、オペルをカナダのマグナとロシア(GAZ(ガズ)、ズベルバンク)の連合チームがライバルのイタリア・フィアットに競り勝って買収に成功したことである。

カナダのマグナはロシア企業と密接な関係

新緑のモスクワ郊外の森にて。最近、自転車(MTB)に乗る子供が急増中

 この連合チーム、一見不可思議に見えるかもしれないが、カナダのマグナとロシアのガズは密接な関係にある。 ガズのオーナーであり、昨年のロシア長者番付1位であったデリパスカ氏がマグナ株式の18%を保有する大株主であった。

 しかし、昨年秋以来の金融危機で、デリパスカ氏はマグナ株式の売却を余儀なくされた。そしてズベルバンクはガズの最大の債権者である。

 今回のディールの結果、ズベルバンクはオペルの35%を保有するほか、マグナと共同で今後5億~7億ユーロの運転資金融資を行うことになる。 ちなみにマグナの保有比率は20%であり、ズベルバンクはGMと並ぶ筆頭株主である。