メモリアルデーを含む3連休を前に、5月21・22日の米国市場は、米国債の格付け引き下げ懸念を材料に「トリプル安」を続けた。だが、日本の債券市場は冷静。週明け25日の取引では、債券売りが先行したものの、その後は押し目買い意欲の根強さゆえに底堅く推移した。

 一般論として、債券市場は、1990年代を中心に不良債権問題に長く苦しんだ経験を有する上に、企業等の資金需要の手応えを通じて景気の実情をリアルタイムで把握しやすい銀行勢のプレゼンスが相対的に大きいため、海外勢や個人投資家のプレゼンスが大きい株式市場に比べ、景気指標が多少上向いた場面でも、楽観論にはなかなか傾斜しにくい。

 「経済活動の低迷や金融システムの悪化という観点で見ると、1990年代の日本の経験と米国が2007年夏以降に経験していることには、驚くほど類似点があります」(4月23日ニューヨークでの白川日銀総裁講演)。日本の不良債権問題とのあまりの類似性に日銀幹部も驚かざるを得ない米国の今回の構造不況でも、債券市場参加者から聞こえてくる声には、慎重なものが圧倒的に多い。これが、米国(および欧州)に比べて、長期・超長期の金利上昇が日本ではきわめて限定的な幅にとどまっている理由の1つであろう。

 そうした中、日銀の白川総裁と近い関係にあるとされる米連邦準備理事会(FRB)のナンバーツー、コーン副議長が23日の講演で、米国経済動向について、次のように非常に慎重な言い回しを用いた上で、超低金利が長引くとみていることを示唆していた。

 「私の見解では、(米国)経済はいま、安定化しつつあるかもしれないという兆候を示し始めているにすぎない。そして、上向きの動きが始まる時には、それは金融仲介機関や家計のバランスシート修復の中で、緩やかなものになる可能性が高い(In my view, the economy is only now beginning to show signs that it might be stabilizing, and the upturn, when it begins, is likely to be gradual amid the balance sheet repair of financial intermediaries and households.)」

 「その結果、連邦公開市場委員会(FOMC)がフェデラルファンド(FF)レートの目標水準を引き上げ始める必要が出てくるまでには、おそらく時間がしばらくかかるだろう(As a consequence, it probably will be some time before the FOMC will need to begin to raise its target for the federal funds rate.)」

 コーン副議長講演については、上記のくだりがいくつかのマスコミ報道で取り上げられていた。だが筆者は、今回の講演には、より重要な部分があったと考えている。それは、「金融政策がゼロ制約に直面している際の財政政策」と題した章にある、おおむね次のような内容の見解表明である。