(英エコノミスト誌 2009年5月9日号)
フランス流の制度は、なかなか優れているように見える。少なくとも、この多難な経済状況においては・・・。
フランスでは教会や大聖堂の修復も景気対策〔AFPBB News〕
フランス北部ピカルディ地方の街ボーヴェでは、地上60メートルを超える高い所でフランス流の景気刺激策が進行中だ。小さな絵筆とサンドブラスターを手にした職人たちが足場の上で、14世紀ゴシック様式の大聖堂の傷んだ壁面を手入れしているのだ。
200万ユーロ(270万ドル)かけた修復工事は、総額260億ユーロに上る景気刺激策の一環としてフランス政府が策定した1000件のプロジェクトの1つ。
フランスの刺激策には、高速道路や港湾、そして高速鉄道網TGVの改良のような一般的な公共事業と並び、歴史的な大聖堂や教会の修復も含まれている。
危機のさなかでも、フランス人はやることが違う。米国から消費者の需要喚起に努めよと説かれても、フランスの景気刺激策はディリジズム(統制政策)の伝統に倣い、大聖堂修復も含むインフラへの前倒し投資に大きく偏っている。
重い税金と厳格な規制、保護を伴う慈善的な国という点では、大陸欧州の多くの国と共通している。しかしルイ14世時代に財務・産業総監を務めたジャン・バティスト・コルベールの下、道路、運河、巨大産業を構築してきた過去を彷彿させるフランス以上に、それが際立ち、また確立している国はない。
近年、金融危機が起きる前まで、フランスモデルとして漠然と認識されている国のあり方は、主に十分な経済成長と雇用創出を実現できないという理由から批判を浴びていた。フランスモデルを批判したのはアングロサクソン人だけではなく、ニコラ・サルコジ大統領もその1人だった。
サルコジ氏は近頃は、レッセフェール(自由放任主義)の終焉を宣言したことで名を広めたかもしれない。しかし彼が大統領に選ばれた理由の1つは、フランスモデルは行き詰まっており、讃えるべきは英国と米国のモデルだと主張したことだった。

サルコジ氏より先に、政府委託による一連の報告書――国際通貨基金(IMF)の前専務理事であるミシェル・カムドシュ氏やBNPパリバのミシェル・ペブロー会長らによって書かれたもの――が、フランスの制度の失敗とコストを明らかにしている。
フランスの公共支出は2007年にGDP(国内総生産)の52%を占め、英国の45%、米国の37%を上回っていた。にもかかわらず、1997年から2007年までのフランスの年間GDP成長率は経済協力開発機構(OECD)の平均を下回った。
確かに、フランス経済は他国と同じように、世界的な景気後退に打撃を受けている。企業は生産を縮小し、雇用を削減している。2月の失業率は8.6%に達した。雇用削減に対する抗議行動はフランス全土に広がっている。もっと悪いことに、経営者が従業員によってオフィスに夜通し監禁される「boss-napping(経営者の誘拐)」が頻発している。

しかし、フランス経済は多くの国ほど深刻な影響を受けていない。IMFの予想によれば、フランスのGDPは今年3%収縮する見通しで、英国の4.1%、イタリアの4.4%、ドイツの6.2%よりも縮小幅が小さい(右図参照)。
フランスはドイツほど輸出に依存しておらず、2009年第1四半期の個人消費は前年同期を上回った。普段は浪費を非難されるフランス政府だが、今年、フランスの財政赤字(GDP比6.2%)は米国(13.6%)や英国(9.8%)の赤字を大幅に下回る見通しだ。
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